●布佐台幼稚園の考える「教育」とは |
最近、教育論議が盛んです。「ゆとり教育推進派」と「学力向上派」に分かれ、議論されていますが、子どもの能力を伸ばすための教育はどうあるべきか、という視点が欠けているようで残念でなりません。
ゆとり教育は、過度な受験勉強によるストレスを軽減するためといわれていますが、そのような現状は全く見当たりません。かえって、学力の低下を招いてしまいました。学力向上派は、いわゆる読み書き計算をしっかりやるという、これまで我が国が行ってきた手法で学力を向上させるということです。
本来、教育は子どもの能力を開花させるためのものです。学力(読み書き計算)が低いので高めるということは、病気にたとえると対処療法といえるかもしれません。今の教育論議に予防医学的な発想がほとんどあがってこないことが問題です。どのような教育が子どもの能力を高められるのか、肝心なこの点についての教育論が欠落しているのです。
それでは、どのような教育が、子どもの能力を高められるのでしょうか。結論から申しますと、乳幼児期の教育(0〜5歳位)が最も重要だといえます。家庭教育と幼稚園教育がこれに当たります。学力を築く上での土台、しつけ(人間としてのたしなみ)が、この期間に完成されるからです。土台がしっかりしていなければ建物は揺らぎ、やがて崩れてしまいます。小中学校で読み書き計算をしっかり学ぶことは、もちろん大切ですが、それ以上に乳幼児期の教育が重要であることは、日本では残念ながら、脳科学者など一部の人たちにしか理解されていません。
本園で創立以来取り組んでいる教育は、小学校のように学力を身につけさせるのではなく、学力を築く上での土台・しつけをしっかりすることです。この土台とは後述しますが、「脳を育てる」ということです。最新の脳科学の理論にも裏打ちされた教育です。 |
●「確かな学力」をそだてる |
これは2004年、千葉県教育委員会「千葉県幼児教育振興プログラムの指針」のなかで、各幼稚園が努力しなければならない4つの重点目標の最初に掲げられた目標です。一見すると小中学校の目標と見間違う目標です。
これまで、幼稚園教育では長きにわたり、自由な遊びを通して学んでいく視点が強調されてきました。さらに、行き過ぎた自由や個性の尊重が声高く叫ばれたため、自分勝手で傍若無人な振る舞いの日本人が増え、奇怪な犯罪・事件が頻発するようになりました。
最近の子どもに関する事件を考えますと、発達障害とみられる子(大人)による事件が増えてきているようです。昨年度、不登校の児童・生徒の数、割合がともに減少したそうですが、不登校生徒の受け皿の学校では、発達障害の子が増加していると警鐘を鳴らしています。実際、発達障害(遅れ)は、近年、急激に増加しているとの情報(我孫子こども発達センター)もあります。
これらのことは、いったい何を意味するのでしょうか。脳科学者によりますと、生まれてから1歳までの間に母親とのコミュニケーションに問題があると情緒障害児になる可能性がとても高いそうです。また、3歳までの子育てを手抜きすると、思春期に子どもがとても不安定(不登校など)になるそうです。幼児期のスキンシップが大切なポイントとのことです。
「三つ児の魂百まで」という格言がありますが、諸外国にも似た言葉があるそうです。「2歳まではテレビを消しましょう」という標語も、TV漬けの子は言葉の発達が遅れるという、日米の小児科医学会からの警告です。
こうしてみますと、幼児期の教育(家庭教育)こそ肝心、要です。躾が重要なのです。躾とは、人間としての礼儀作法の基本、人間としてのたしなみを身につけさせることで、たいへん大事な人間としての土台づくりなのです(=森信三先生のお言葉)。 布佐台幼稚園では、家庭と協力しながら集団生活のルールや規範意識を養い、躾を大切にした教育に取り組んでおります。 |
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広〜い第二園庭 |
ここで忍者ごっこだ〜!! |
男の子ご用達の小山 |
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広〜い畑 |
朝取れの大根 |
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二宮尊徳像ですよ〜!! |
幼稚園側の頼朝坂 |
可愛い園バス |
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●ニートにさせないために |
ニートが急増しています。ニート(NEET)とはNot in Employment, Education
or Trainingの略で、「職に就いていず、学校機関に所属もしていず、そして就労に向けた具体的な動きをしていない」若者を指します。現在、日本にはNEETに分類される若者の数は68万人(同世代2%!)と言われています。彼らはこのままですと、将来は生活保護を受ける可能性が高まり、定年で退職した収入のない高齢者同様、勤労者がその生活を保障していかねばなりません。つまり、国の税収が減り、社会保障費がさらに増大するとともに、まもなく訪れるであろう大増税時代に拍車をかけることになります。
さて、幼児教育とニートが、なぜ関係があるのでしょうか。実は、現在の教育の流れは20年近く前から幼・小・中学校で一貫して「ゆとり教育」を色濃く反映されてきたもので、その影響が近年になって、現れてきたともいうべきものなのです。
ここで、「ゆとり教育」の一部を確認しておきましょう。 |
<A>
個性を尊重し、自由に伸び伸びとした
行き過ぎた教育方針の例(幼児期〜) |
<B>
青年期・就職期 |
1 |
自分の思い通りの生活・体験が中心。(満足・成功体験中心) |
2 |
関心が高まり、意欲が湧いたら遊ぶ、(学習・選択学習)する。 |
3 |
自分のペースで物事に対して取り組む。 |
4 |
周りが自分を理解し、認めてくれる。 (努力・過程を評価) |
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もし、このまま
大人になったら
→ |
1 |
いやなことがあったら、途中でも投げ出してしまう。(中途退学・中途退職) |
2 |
仕事でも、やりたくなければやらない。やりたくない。長続きしない。(社内ニート) |
3 |
周りのことに構わず仕事を進めるためトラブルが絶えない。 |
4 |
自分の能力を認めてくれない上司・社会が悪い。(成果主義社会) |
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→自分探しへ |
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<A>のような教育方針のまま、育てられた若者達は、一般社会に出たとき<B>のような事態におそらく遭遇するに違いありません。
ここで、ふと考えますと、実際にいるではありませんか、<B>のような若者たちが。ニート達です。ニートの急増は「ゆとり教育」の成果・犠牲者ともいえるかもしれません。
幼稚園教育(学校教育)として大変重要なのは、社会性を身につけることです。つまり、<A>のような教育方針に加えて、(1)我慢する生活体験 (2)なりたい職業に向かっての努力(学習)と忍耐力 (3)周りへの配慮と協調性 (4)コミュニケーション能力を磨き、自分を表現する力を身につける。 このような教育こそ大切ではないでしょうか。
幼児期には(1)と(4)が特に重要で、これらにより幼児期の脳(心)が特に発達することがわかってきています。 |
●子どもの脳が小さくなってきている |
ところで、日本の子供(10歳)の脳(前頭葉=人間である証。感情のコントロールやコミュニケーション能力等をつかさどる)が10年前に比べて小さくなってきている(未発達)という恐ろしい調査結果(香山リカ 精神科医)があります。キレル子・大人(虐待する親)は急激に増えてきているのです。キレる子は、感情の表現をうまく言葉で伝えることが苦手で、最終的に暴力に訴えざるを得ません。この子ども達はある意味で、発達遅滞(未発達)ともいえるでしょう。
それでは、キレない子・心豊かな子を育てるにはどうしたらよいのでしょうか。最新の脳科学によると、前頭葉を育てることがポイントのようです。そのためには、幼児期にほめる回数を多くし、オーバーなくらいにほめると脳が活発に活動し、優れた脳になるそうです。さらに幼児期に我慢をさせると、大脳の前頭葉(感情のコントロール)が活発に活動します。親子の対話や絵本読みも大変効果があるそうです。
言葉の世界が広がれば、心の世界も広がります。感情の表現は、語彙(言葉数)の多さで決まるのですから。
そこで、私たちは今一度、教育について考える必要があります。そもそも人間の脳は、2歳で60%、4歳で80%が完成されます。3歳・4歳・5歳が脳の発達のピークです。この時期を逃してはなりません。わが国の教育は、古来より寺子屋にも見られるように、漢詩や論語などの暗記・暗誦が必須とされてきました。戦前までは国語教育が重視され、小学校では週に10時間以上もありましたが、今はたったの4〜5時間。さらに週5日制で、学校は1年間の半分近くが休日です。これでは国語力が落ちてあたりまえです。国語力が低ければ他の教科も理解ができず、総合的な学力も当然低くなります。 |
●脳科学に基づいた国語教育を |
このような情勢の中、いま、国語教育が注目されています。論語や名文の暗誦・朗誦が、脳の前頭葉を活性化することが明らかになってきたのです。ただし、その文章の理解度は関係がないそうです。振り返りますと、なんとこれは、昔ながらの日本の国語教育ではありませんか。
日本語は、欧米のアルファベットと違い、漢字かな交じり文です。ひらがなは一文字ごとに意味を持たない音で成り立っており、アルファベットに似ています。声に出さないと同音異語はまったくわかりません。しかし、「漢字」はそれ自体に意味を持った文字です。ここがポイントです。欧米の知育教材は確かに優れているものが多くありますが、肝心の言語能力を育成するために、それらはすべて「ひらがな」から教えています。これは間違いです。最新の脳科学が解明しつつあるのですが、幼児期の脳は、「ひらがな」のように音声を聞いて理解する、主に左脳が働くようなことは不得手で、「漢字」のように目で理解する右脳が中心に働くことが得意なのです。つまり、幼児にとって「漢字」は「ひらがな」より易しいのです。
このことは、2004年1月、文部科学省の国語審議会の最終報告書に、「3歳〜12歳は漢字の読みを重視し、語彙を増やす」という方針が打ち出し出されたように、"中学校卒業までに習う全ての常用漢字(約2,000字)を、小学校卒業までにすべて読める(書けるようにするのではない)ようにする"ことを推し進めることが確認されました。これは学習の基盤となる言語・表現力などの基礎・基本を確実に身に付けさせるということです。 |
●心をはぐくむことは、脳を育てること |
布佐台幼稚園では、このような視点から、「心を育むことは、脳を育てること」と捉え、石井式教育(言葉の教育)とミュージックステップ(音楽教育)を毎日取り入れ、右脳を刺激することで左脳(書くことや計算など)・前頭葉を発達させていく「適時期の教育」に20年以上にわたって取り組んでおります。
さらに、豊かな自然環境を生かした自然体験教育では、自然の林の中でターザンごっこ(アスレチック遊具)をしたり、園に隣接する農場で、園児が植えた薩摩芋(ほかに大根やじゃが芋)などを収穫したりしています。お茶摘みなどの体験も毎年行い、土・虫・植物などの自然に親しむことを大切にしています。これは、自然体験の多い子どもほど、思いやりのある子に育つといわれているからです。また、運動面でも広い園庭のなかで思いっきり遊びまわれます。
こうした「適時期の教育」は、いわゆる「自由遊び中心の保育」と対極をなすものですが、これからの日本を立て直すために、「適時期の教育」は重要であると確信しております。 |
●幼児教育は国家戦略 |
政府与党も05年9月の選挙公約の中で、はじめて「幼児教育を国家戦略として展開する」という文言を、教育改革の第1番目に位置づけました。
2004年の 「幼稚園PTA連合会 全国大会」の席上で、自民党幹事長代理(当時) 安倍晋三氏は、幼児教育に対し、いくつかの苦言・提言をされました。その中で、「ここまで学級崩壊(小学校1年生でも多発)が進んできたのは、幼稚園がおこなってきた【自由保育】に問題があると思います。幼稚園は、初めて集団生活に入る場所です。ここが一番大切です。これからの日本を担っていく子どもたちのために、どんな教育(幼児教育)が良いのか、国の最重要課
題として取り組んでいかなくてはならない。」と繰り返し話されていたことを思い出しました。
ようやく我が国も、抜本的な幼児教育改革に着手する足がかりができました。これからの国の幼児教育政策は、大きく改善されていくに違いないでしょう。
大変長くなりましたが、最後までお読みくださり、ありがとうございました。幼稚園教育が、就学前教育として『人生で一番大切な時期』適時期の教育こそ大切だと捉える本園の教育思想に、ご賛同くださる方のご入園をお待ちしております。 |