格差社会のおける志望校選択

1月の千葉・埼玉入試、近畿統一入試の結果は志願者増による大激戦との報告があちこちからなされている。そして東京・神奈川でも入試に突入する。受験率の高まりと小学校6年生の増加が大激戦の原因だ。入試の厳しさのバロメータとなる土佐塾の東京・大阪会場入試はどちらも出願者数が前年比4割アップだった。

 

これほどまでに中学受験が盛んになった一因の一つは、昨今の「ワーキングプア」や「下流社会」などの言葉がクローズアップされてきたからだろう。今年は改善したとは言え、ここ何年間かの就職氷河期の印象とも相まって、「わが子を下流にしてなるものか」と考えた親が、よりよい教育を求めて中学受験に走ったという側面がある。

 

乱暴に言ってしまうと、どの学校が良い大学に入れるかで志望校を決めてしまう。しかし、そんな単純なことでいいのだろうか。わが子の将来を見つめるときに、大学進学という狭い視野だけでものを考えていては不十分だ。大学は手段でありその後何をしたいかが重要だ。こども達が大学卒業する16年後の社会を見すえなくてはならない。

 

とは言うもののドッグイヤーと言われる現代社会で16年先とは遙かな未来と言える。そんな時に思い出すのはかつてホリエモンが発した、「もっと勉強しないとズル賢い人たちに騙されちゃいますよ」という言葉だ。

 

16年先にはかなりの不確実性が存在する。たとえば膨大な日本政府・自治体の借金であり、アメリカ政府の巨額赤字だ。BRICsと呼ばれる国々の台頭、エネルギー資源、核拡散、地球温暖化など地球規模の不安定要素がたくさんある。

 

そんな時代を生き抜くには、単に「良い大学に入る」だけでは不十分。皆と同じことができるだけでは、幅広く活躍することができない社会が待っている。ズル賢い人達にだまされることなく、自分の頭でしっかり考える力を養っていく必要がある。

 

その助けとなる教育をしている学校はどこなのかを見定めなくてはならない。今、その学校は大学進学実績が奮っていないかも知れない。しかし、将来必要とされる力と現在の大学実績に相関があるとは限らないのだ。

 

単に偏差値で学校を見るのではなく、シラバスと呼ばれる教育課程全般の計画・内容をまずチェックする。それからその学校の特色は何かを見る。例えば英語に力を入れていて担当教師はすべて外国人であるとか、ゼミ形式の授業を多く取り入れていて生徒の議論が活発に行われているとかだ。

 

例を挙げると

・カリタス女子…小学校からフランス語の授業があり、その授業中は日本語は使わない。また徹底的に話し合うという姿勢を養うっている。

 

・東京女子学院…中1からネイティブスピードで話す徹底した英語教育が特色。そして第二外国語と弦楽器の授業、華道・礼法も必修。ただ英語の授業を増やすだけではなく、国際的に通用する人材育成を目指していると言える。

 

・巣鴨中学…全学年参加5月連休中の大菩薩峠越え強歩大会(午前3時頃出発翌12時ゴール)、柔道剣道の早朝寒稽古等のハードな行事の数々。逞しい文武両道の青年を育てたいという理念が表れている。

 

難易度から受験可能な学校をリストアップして、その校風や上記のような特色を調べて、自分の子どもに合うかどうか確かめる。さらに大学進学実績もこれなら納得できるという学校が選べれば良いのではないか。

 

もちろん難関校受験する場合はあまり気にする必要はない。難関校は大学受験対策などのために授業をしたりはしない。進学実績がいいのは入り口の偏差値が高く良質な生徒を集められるからだ。そこに伝統のある教養教育をプラスしているのだから、それで十分と言える。

 

真ん中クラスの受験生こそ真剣に学校選びをするべきだ。同じ難易度でも様々なタイプの学校が存在する。小生も最初の子どもの中学受験に際し、当時はまだあまり知られていない2校に目をつけその内の1校受験させた。今ではその2校共に難易度が大幅に上昇している。

 

諸君も将来有望な原石を見つけ出してはいかが。

e-お受験.com 黒田 官兵衛筆
文責 木下 健藏